循環経済への転換を加速する法改正
近年、資源を巡る状況が世界的に変化し、日本の産業構造にも大きな見直しが迫られています。その中で今年2月2日、通常国会にて「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。世界的な資源需要の増大や脱炭素化の要請を背景に、循環経済(サーキュラー・エコノミー)への移行を国家戦略として進めるための重要な一歩です。
特に注目されるのが、「資源有効利用促進法の一部を改正する法律案」(資源有効利用促進法)でメーカーに対して再生資源の利用を事実上“義務化”する仕組みが導入される点です。
現行の資源有効利用促進法
2001年4月に施行された現行の資源有効利用促進法は、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進を目的としています。
3Rには、
・製品の省資源化
・長寿命化等による廃棄物の発生抑制(リデュース)対策
・回収した製品からの部品等の再使用(リユース)対策
・産業廃棄物対策としても、副産物の発生抑制(リデュース)
・製品の再資源化(リサイクル)の促進
などがあります。製造事業者には省資源化やリサイクルのしやすい製品設計など、幅広い環境配慮が求められてきました。
しかし、法律の枠組みはあくまで10業種・69品目についての「環境配慮の促進」であり、再生資源を原材料として使うことそのものが義務化されていたわけではありません。これまでの制度では、廃棄物発生の削減やリサイクルしやすい構造の採用など、設計や工程面の取り組みが中心でした。
資源有効利用促進法の改正で変わること
今回の改正案では「再生資源を製品に利用すること」が明確に制度として位置づけられます。国が再生資源の利用が特に必要とする製品を特定し、その製品の製造量または販売量が一定以上の事業者に対し、再生資源(リサイクル材)利用の目標計画の設定と定期報告を義務づける仕組みが導入されます。
また、「解体・分別しやすさ・長寿命化につながるなどの設計に対する認定制度の創設」、「事業者による回収・再資源化義務のある製品について、高い回収目標等を掲げて認定を受けた事業者に特例措置」、「サーキュラーエコノミーコマース促進に向けた基準設定」も改正内容としてあげられます。
これは、メーカーの製品サイクルのあり方そのものを見直すことにつながる大きな転換点です。従来の努力義務的な枠組みから、より実効性の高い義務へと舵が切られたといえます。
この動きの背景には、資源価格の上昇や世界的な再生材の獲得競争の激化があります。天然資源の輸入に依存する日本にとって、再生資源を安定的に確保し、自国内で循環させていくことは重要性を増しています。
再資源化事業等高度化法との関連
現状、再生材は量が多く集まる一方で、高品質なものの供給が十分とは言えない状況です。本法は、循環経済への移行への推進のため、高品質な再生材の安定供給と脱炭素化の両立を目指します。
国は、再生材の安定供給を整えるため、関連法である「再資源化事業等高度化法」も今年2月1日に一部施行しました。この法律により、廃棄物処分業者には再資源化技術の高度化や製造業者との連携が努力義務となり、質の高い再生材の供給体制を整える流れが進んでいます。循環経済への移行を加速するための仕組みづくりを促すものです。
改正法と高度化法という二つのアプローチで、循環型社会の実現を同時に押し出す設計になっています。
製品のライフサイクル全体で無駄のない資源循環を実現することが狙いとされています。
メーカーの今後
このように、法律面が整備されていく中で、メーカーには大きな経営判断が求められます。再生資源の利用義務化は負担ではなく、むしろサプライチェーンや製品設計の見直し、リサイクラーとの連携強化などは環境配慮型の市場価値向上につながり、企業の競争力を高めるチャンスとも言えます。
市場が循環経済へと移行する時代において、この変化を成長戦略として活かせるかどうかが、企業の未来を左右するでしょう。
参考資料
・Re-Tem Eco Times. 「資源有効利用促進法の改正案」. コラム. https://www.re-tem.com/ecotimes/column/apr2025/#2 (最終閲覧日 2025.12.03)
・環境省.「資源有効利用促進法の概要」. 環境再生・資源循環. https://www.env.go.jp/recycle/recycling/recyclable/gaiyo.html (最終閲覧日 2025.12.03)
・経済産業省. 「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました. 2024年度2月一覧.
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250225001/20250225001.html (最終閲覧日 2025.12.03)
・内閣府 (CSTP).「サーキュラーエコノミー等に関する検討資料(第3回経済システム分科会)- 資源循環セクション資料4-3」.
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/iinkai3/economysystem_6/siryo4-3.pdf (最終閲覧日 2025.12.03)
・農林水産省資源循環局. 「再資源化事業等高度化法について」. in 環境省環境再生・資源循環局資源循環課. https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/pra-tf/dai2tf/dai2tf-shiryo3-moe1.pdf (最終閲覧日 2025.12.03)